- あまのさとこ

- 8月10日
- 読了時間: 6分

▼ 目 次
お灸は、もっと自由でいい
「お灸は、もぐさを使うもの。」
そう思いますよね。
その気持ち、とてもよくわかります。
私自身、透熱灸や押し棒灸など、もぐさを使ったお灸を長年続けてきました。
もぐさのお灸を否定するつもりは、まったくありません。
むしろ私は、お灸が大好きです。
だからこそ今、お灸のこれからについて考えています。
中医学にどっぷりの鍼灸学生でした
こんにちは。灸活未来塾で講師をしている天野聡子です。
私は2000年に関西鍼灸短期大学(現・関西医療大学)を卒業し、病院勤務を経て開業しました。
私が学生だった頃は、
「素問、霊枢、難経…古典が読めなきゃ鍼灸師じゃない!」
というくらい、古典を読むことが当たり前でした。
私も中医学の理論がおもしろくて、中国語の原文を読み、すっかりその世界に浸っていました。
ところがです。時代とともに、鍼灸の世界も変わってきました。
西洋医学や科学的根拠(エビデンス)に基づいて鍼灸を説明することが増え、スポーツ、美容、介護、在宅など、鍼灸師が活躍する場所も広がりました。
私は、この変化を悪いことだとは思っていません。
鍼灸は、時代とともに変わっていい。
そう思っています。
鍼灸の外から、もう一度鍼灸を見てみた
コロナ禍で少し時間ができたことをきっかけに、私は3ヶ月間エステスクールへ通いました。
実はそれまで、美容にはほとんど興味がありませんでした。
灸活でも美容を取り上げることになり、ましてや禁灸と言われてきた顔にお灸を使うなど考えられないことだったからです。
ところが、まったく違う世界に入ってみると、これがおもしろい。
リラクゼーションは、治療はしない手技の世界。
技術も違えば、身体の見方も違う。
お客様への接し方も、鍼灸師とは違います。
でも、
「目の前の人に、よくなってほしい」
という気持ちは同じでした。
外の世界から鍼灸を見てみることで、逆に鍼灸のよさや、お灸のおもしろさを再認識することになりました。
そして、エアコンに叱られた!
私は20年以上、鍼灸専業で治療をしてきました。
「治療所が近づくと、お灸の匂いがしてくる。先生がいると思うのよね」
と患者さんに言われるくらい、毎日お灸をしていました。
そんなある日、20年以上使ったエアコンを新しいものに取り替えることになりました。
取り外されたエアコンを見てびっくり。
お灸の煙で、内部はヤニだらけ真っ茶色。
メーカーの方から、
「これでは、エアコンがかわいそうですよ」
と、こんこんと説教されました(笑)。
そこで改めて考えました。
お灸は好き。
でも、今までと同じやり方を続けることだけが、お灸を守ることなのだろうか。
「できないから、やらない」でいいのだろうか?
今、鍼灸師が働く場所は治療院だけではありません。
病院、介護施設、スポーツ現場、在宅、災害現場……。
火が使えない。煙を出せない。匂いを出せない。
そんな場所が増えています。
その結果、
「どうすればここでお灸ができるだろう?」
ではなく、
「ここではお灸はできないから、やらない」
という選択も増えてきました。
私は、そこがとても気になっています。
お灸で患者さんが変わった経験がありますか?
学校では、もぐさをひねり、きれいに一定の大きさに整え、燃やす練習をします。
もちろん、大切な技術です。
でも、その先にある
「お灸で患者さんを治療する」
という経験は、十分にできているでしょうか。
お灸をしたら痛みが変わった。
身体が変わった。
患者さんの表情が変わった。
そんな経験をすると、お灸の考え方は変わります。
かつての名灸師の中には、自らが大病をし、お灸で克服したことをきっかけに、
灸術を追究していった先人もいます。
私は、現代の鍼灸師にもそんな経験をしてほしいと思っています。
もぐさの操作より先に、「灸治療」を学んでいい
そこで考えたのが、
灸治療を先に学ぶ。
もぐさの操作は、そのあとでもいい。
という逆転の発想でした。
その入口として使えるのが、電子温灸器です。
電子温灸器なら、一定の熱刺激を再現しやすく、
火や煙を使えない場所でも灸治療を経験できます。
そして使い込んでみると、もう一つ分かったことがあります。
電子温灸器は、もぐさのお灸の代用品ではありません。
もぐさにしかできないことがある。
電子温灸器だからできることもある。
それぞれの特徴を知って使い分ければ、お灸の可能性はもっと広がります。
「何を使うか」より「何をするか」
私たちが大切にしたいのは、
「もぐさか、電子温灸器か」
という二者択一ではありません。
大切なのは、
どんな刺激を、どこに使うのか。
患者さんをどう治療したいのか。
ということです。
透熱灸が得意な先生。
スポーツが得意な先生。
美容が得意な先生。
整体や手技療法が得意な先生。
それぞれが自分の得意分野とお灸を組み合わせれば、まだ私たちが知らない「新しいお灸」が生まれるかもしれません。
私自身も、エステを学んだ経験から、リラクゼーションと電子温灸器を組み合わせた「一灸エステ」を考案しました。
伝統を守ることと、変わること
「もぐさを使わなければ、お灸ではない。」
そう考えることもできます。
でも、私は少し違う考え方をしています。 最近では、煙の少ない台座灸や、香りを楽しむタイプのお灸など、さまざまな製品が生まれています。
使われる素材も、昔ながらのお灸とは少しずつ変わってきました。
守りたいのは、道具や形ではありません。
お灸によって人を治療してきた「灸術」そのものです。
昔から伝わる技術をきちんと学ぶ。
先人の知恵を受け継ぐ。
そして同時に、現代の医学や科学からもお灸を考える。
新しい道具や方法も試してみる。
その両方があっていいと思うのです。
お灸は、古くて新しい
時代が変われば、時代が変われば、その時、その土地、
そして、患者さんによって治療法も変わります。
お灸だって、変わっていい。
でも、
「お灸で人を治したい」
という私たちの思いは変わりません。
古くから受け継がれてきたお灸を学び、臨床で追試し、科学の目でも見つめ直す。
そして、次の世代へつないでいく。
お灸文化を、科学と臨床の両面から次世代へ。
それが、灸活未来塾の目指していることです。
一緒に、お灸の未来をつくっていきませんか。



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